先日、富山空港に国交省航空局の飛行検査用航空機
「チェックスター1(JA001G)」が飛来しました。
「チェックスターの追っかけ」を勝手に自称する当チャンネルですが、実はこの
JA001Gは
初収録。同型のJA002Gとあわせても、この
Gulfstream-IV(G4)は初収録となりました。
まずはその飛行の様子を
動画をご覧ください。
- Flight Data -
Date: Aug 18, 2014
Airline: 国土交通省 航空局 JCAB Japan Civil Aviation Bureau
Aircraft: Gulfstream Aerospace G-IV-SP Gulfstream IV
Registration No.: JA001G
1st Low approach:0555Z
Runway: 02
Type of approach: RNAV(RNP) RWY 02 *flight validation of the establishment before.
METAR: RJNT 180500Z 34006KT 9999 FEW030 SCT/// 32/24 Q1012
2nd Low approach:0602Z
Runway: 20
Type of approach: Unknown
METAR: RJNT 180600Z 36008KT 9999 FEW030 SCT/// 32/24 Q1012
ちょっと緊張しちゃって画が震えちゃってますが、記録ということでご勘弁を…
このチェックスター1とチェックスター2は、主に
エンルート検査などて活躍する機体。航法施設の検査で空港周辺に現れることが少なく、富山空港では貴重なワンシーンとなりました。
そして当チャンネルでは、めでたく飛行用検査航空機
「全4機種」の収録に成功!正直、JA001Gに富山空港で出会えるとは思っていなかったです。
機体別で未収録なのはJA002Gですが、これも富山で撮るっていうのは難しいかなぁ…。
- JA001G:Gulfstream Aerospace Gulfstream IV-SP 【撮影済】 ※今回飛来 飛行検証
- JA002G:Gulfstream Aerospace Gulfstream IV-SP 【未撮影】
- JA003G:SAAB 2000 富山LOC検査 【撮影済】
- JA004G:SAAB 2000 富山LOC検査 【撮影済】
- JA005G:Bombardier Global Express BD-700-10 富山VOR更新検査 【撮影済】
- JA006G:Bombardier Global Express BD-700-10 富山LOC検査 【撮影済】
- JA007G:Bombardier DHC-8-Q300 富山VOR/LOC/灯火検査 【撮影済】
これらチェックスター動画はこちらの再生リストにまとめてあります。ぜひご覧ください。
そんなチェックスターですが、
以前のブログでもお伝えしたように…
と、このJA001Gを含む4機が更新・退役となる計画です。これが最後の出会いにならなければいいんですが…
---
さて、気になる飛行検査内容ですが動画冒頭の
1回目の
ローアプローチ、
「滑走路02」(空港南側から北側へ飛行)に対して行われています。
(以下はあくまでも研究扱いです…汗)
この
滑走路02への
ローアプローチはちょっと珍しく、私自身
「航空灯火」の検査でしか見たことがありません。この日は灯火の全点灯等はなく、また灯火検査は低速飛行が出来る他の機種で行われることが多いです(富山空港ではJA007Gが多い)。
また富山空港に設定されている4つのアプローチチャートはすべて滑走路20のものですので、アプローチの検証飛行であれば滑走路20(動画2回目)へローアプローチが行われるのが通常です。
では何をしているのか。おそらくこの地元新聞の記事でも報じられた新しい飛行方式の
「設定検証(新たに飛行方式等が設定される場合に行う検証)」にやってきたのではないかと思うのですが…
■新航法システム導入へ 富山空港
国土交通副大臣の野上浩太郎参院議員は4日、今冬にも富山空港に新たな航法システム「RNP−AR飛行方式」を導入する方針を明らかにした。
国交省管制課によると、同様の方式は、11空港で導入されている。GPS(衛星利用測位システム)などを活用し、滑走路への進入経路を柔軟に設定できるため、悪天候時の着陸の精度や安全性の向上が期待でき、冬の就航率アップにつながる可能性があるという。
県が以前から国に早期導入を要望していた。
引用:北日本新聞 2014年06月05日
今冬の導入となると時期的にも合致しています。秋には航空路誌改訂で発表されるものと思われます。
このRNP-AR飛行方式導入空港の選定については、主にJAL/ANAの737NGシリーズ就航空港から順次設定を行い、ILSやLOCが導入されていない滑走路に対して設定されるそうです。(2013年の羽田空港「空の日」談)
となると、富山空港では滑走路02に対して導入が行われるものと予想しています。
|
これが富山空港で行われた最初のRNP-ARアプローチ(設定検証)か |
ではこのRNP-AR飛行方式について、他空港での導入の例を見てみましょう。
ここでは
大館能代空港を例にとってみます(ノンレーダー空港・滑走路11にのみILS設置)
NOSSYを出発した航空機が
滑走路29への着陸を実施する場合、富山空港と同様に
サークリングアプローチ(周回進入)となり、肝心のMINIMAは「CIRCLING」が適用になります。
「ILS Z or LOC Z RWY 11」チャート
|
大館能代空港の「ILS Z or LOC Z RWY 11」チャート
MINIMAの「CIRCLING」の値に注目
CAT CでMDAが1220、"VIS"は2100だ |
では
「RNP-AR」ではどうでしょうか。
NOSSYが
IAFとなる
「RNAV(RNP) Y RWY 29」チャートをみてみます。
|
大館能代空港の「RNAV(RNP) Y RWY 29」チャート
MINIMAの値に注目、「ILS Z or LOC Z RWY 11」のCIRCLINGと比べると、
DA/CMVともに下がっている |
MINIMAの数値は
「ILS Z or LOC Z RWY 11」のCIRCLINGに比べて大幅に下がっていて、VISだった視程も
CMVの適用が可能になっています。
つまり、視程が悪い場合や雲が低い場合などはRNP-APを実施したほうが着陸できるチャンスが大きくなるのです。
富山空港では年に数度、北風が強い場面において視程が悪かったり雲が低くて着陸ができないということがあります。その場合でもこのRNP-ARを使えば、おそらく現行のRNAV(GNSS)RWY20と同等のMINIMAが滑走路02側にも適用できるものと思われます。
気になる飛行コースですが、大館能代空港と同様のシンプルな形態のものが設定されるとなると、IAFは従来のMEDICポイントから南西(呉羽山以西)へ直線飛行、新たに設定されるであろうIF(ねいの里・頼成の森周辺?)から円弧を描き滑走路02にアラインするのではないかと思われます。
もしくは従来のMEDICをIAFとはせず、まったく新しいIAFが登場する可能性もあります。場合によっては
滑走路20にも設定されるかもしれません。
またRNP-ARではFAF地点を滑走路の延長線上以外の地点に設定ですることも出来るため、市街地を避けた騒音軽減コースや、山の谷間や河川の上を進むような複雑なコースも設定できます。
富山ではどんな飛行コースが設定されるのか、発表が待ち遠しいですね。
ただこのアプローチ、
「100人100通り」の飛行が見られるわけではなく、厳密に定められた地点と高度を機上コンピューターによって飛行する為、どの航空機も判で押したような飛行が行われます。FR24で航跡をみると、このチャートとまったく同じものが出来上がります。
従来のサークリングアプローチが一切行われなくなるというわけではありませんが、
「近い!」「低い!」などといった
“サークリングアプローチの面白さ”は、このRNP-ARアプローチを実施する場合には見られなくなるでしょう。
|
熊本空港の「RNAV(RNP) Y RWY 25」チャート
このような曲がりくねったアプローチコースも設定できる |
|
8月12日 JL1813 熊本空港への航跡
「RNAV(RNP) Y RWY 25」を実施したものと思われる |
|
こちらは7月26日 JL1813便の航跡
8月12日の航跡と比べても、見分けがつかないほどに同じコースを飛行している |
それではどんな航空機がこのRNP-ARアプローチを実施できるのでしょうか。
富山空港に就航しているANAの機体について、2014年7月30日現在では
787-8/737-700/737-800の各保有機体で可能です(RNP AR APCH Approved)。これ以外の767-300や777-200などは実施できません。
現在富山空港にはANAの
787-8が就航していますので、当該カテゴリーが設定されればこのアプローチを実施できることになります。(ただしRNP-ARは運航会社ごとかつ各機体番号ごとに認証が必要)
このほか富山空港に就航している外国航空会社について、このアプローチが実施できるのかは不明です。これは各国の実施・認可状況やパイロット資格にもよるのでなんともいえませんが、おそらくRNP0.3が必須となっている富山空港の「RNAV(GNSS) RWY 20」を実施できる機体では行えるのではないかと思います。
サークリング嫌い(?)な外国航空会社で実施できるとなると、機上コンピューターで簡単に設定できるこのアプローチを積極的に選択してくるかもしれません。
---
今冬に導入される予定の「RNP-AR」。どのような飛行コースになるのか、またDA/CMVはどれぐらいになるのか、またはまったく新しいSTARとIAFが設定され、斬新な飛行コースになるのか…ちょっと楽しみですね。
発表されましたら、当ブログでもご紹介してみたいと思います。
以上、国土交通省の飛行検査機「チェックスター1」飛来動画でした。