2013年11月10日日曜日

航空管制官への道 - 航空保安大学校の「空の日・オープンキャンパス」に行ってきました

関西国際空港を望む“りんくうタウン”の一角にある施設「航空保安大学校」

航空管制官航空管制運航情報官航空管制技術官を養成する国土交通省の大学校です。

そして11月9日に、この施設の空の日・オープンキャンパスが開催されました。

航空保安大学校全景
左の建物が校舎、右の高層建物が宿舎

昨年、大阪での別件ついでに駆け足で訪れたこの施設。
今年はジックリと見に行こうではないかと(前日に思い立ったんですがw)、遥々富山から始発のサンダーバードに乗ってお出かけです(遠いェ…)

昨年撮影した動画はこちら)





近年、ACCや管制塔に一般人が立ち入る機会はほぼ皆無。チビッコ向けはあるんですけどねぇ。
なかなか実際現場を見ることはできませんが、ここ航空保安大学校ならイベントにあわせて見学が可能です。

ここで学生を指導する教官は現役の航空管制官や技術官の方々。
航空保安大学校を受けられない年齢になってしまった航法・管制マニアのオジサンにとって、現場の生の声や機材を見る絶好のチャンスでもあるのです。
(「若くないオジサンが見てもいいの?」なんて聞くと教官から「いいんですよ、空の日ですから!」と暖かいお言葉…涙)


それでは「航空管制官」に関連する施設からご紹介。

まずは「航空路レーダー管制実習室」です。
いわゆる東京コントロールのようなACCの設備が並び、ここでエンルート管制について学びます。

航空路レーダー管制実習室

管制卓は古いタイプ

航空路レーダー管制卓です。
使用されているのは古いタイプの管制卓。現在、各ACCに導入されている新型を設置工事中で、この11月稼働予定だとか。
今回の訪問では新しい管制卓を見られると思っていたので残念…。


ここでは西日本を中心とした「山陽セクター」を想定して実習が行われています。

ストリップの中にJA001Gを発見

レーダー画面にもCKSTR7

あっ!レーダー画面にチェックスター7がぁ!
ふむふむ、チェックスターは「CKSTR」とタグが付くのかぁ( ..)φメモ
ANAやJALなど、一般エアラインはICAOの3レター+便名数字で表され(例:ANA0882/JAL1270)、それぞれのコールサイン(オールニッポン/ジャパンエア)は管制官が記憶しておく必要があります。
ただ、このようなチェックスターや自衛隊機などの部隊別コールサインは覚えなくてもこのように画面にコールサインが表示されます。たとえば百里基地のF-4“ジミー”がエンルートを飛行する際は「GIMMY」と表示されます。

パイロット用卓

これらの飛行機の機影は仮想の飛行データを使用していますので、それらを操るパイロット役も必要となります。
パイロット用卓も別途設けられ、学生同士で管制官役とパイロット役をそれぞれ務めるそうです。
管制官の実習は概ねこのような形態で行われます。

最初は5機ぐらいから実習をスタート。順次機数や離着陸機を増やしていって、最終的には20機ほどを見られるようになるんだとか。



続いて「ターミナルレーダー管制実習室」
いわゆる「アプローチ・デパーチャー」ですね。エンルート管制とタワー管制の中間的存在です。



ここでは「フレンドシップ空港(RJTV)」と呼ばれる仮想空港で実習を実施。
滑走路は3本ありますよ。
VOR/DMEの3レターやWAYPOINT・FIX名も架空のものを使用しています(教官の子供の名前などが由来となるらしい?!)

レーダー画面上にはシグナスやJALの747-200なども登場しています。(なかなかマニアック)

ターミナルレーダー管制卓

そして今年も見たい、PAR管制卓!

学生や教官に「PARやってるところ見たい!体験したい!」とお願いしてみましたが、「えっ…、やったことないです」と今年も実現ならず…ぐぬぬ

学生からは「実際にPAR誘導を聞いたことありますか?どんな感じなんですか?」と逆質問されてしまいました。

それもそのはず、現在航空局でPARを提供しているのは那覇空港のみなので無理もありません。小松空港で行われているPARは自衛隊の管制隊が行っています。

そのためこの大学校では「こういうのもあるよ」的な実習にとどまるそうです。

PAR管制卓

PARレーダー画面
赤い丸内の三角形が機影を表している

次はいよいよ「飛行場管制実習室」
バーチャルスクリーンを使用した、管制塔実習施設です。

システムダウン中

ズコーッ!

なんとシステムダウンで、ブルースクリーン&マウスカーソルだけがポツンと…。

しばらく待っていましたがシステムは復旧しませんでした。
一般の見学者にとって、いちばんの見どころなんですがねぇ。


昨年撮影の動画ではちゃんと稼働している様子をご紹介していますので、こちらもご覧ください。





ここまでが管制科の展示です。

教官や学生(といっても国交省職員)にもいろいろ質問。

学生に「配属の希望とかありますか?」なんて聞いてみると…

「そりゃタワーですよ、飛行機見えてないとやってらんない!」
「実習しているうちにACCへの希望が強くなってきました」
「ターミナルレーダーが面白いですね」

と、みなさんそれぞれに想いがあるようです。

各ACCや空港に配属されたら、またお空のボイスでお会いしたいですネ。

CSで放送されていたドラマ「TOKYOコントロール」旋風がまだ吹いていた
来年は「TOKYOエアポート」世代が入省してくる


つづいて「電子科」のフロアへ。

まずは航空灯火の実習室からご紹介。

指向信号灯(ライトガン)

先日公開した灯火検査動画でも登場したライトガン。実物を触ってきましたよ。




飛行場の灯火全景。高松空港がモデル
お値段は…ヒミツ

灯火運用卓

進入角指示灯(PAPI) 4基1組で構成される

回転式飛行場灯台
能登空港に設置されていた、新しい小型タイプのものと思われる

滑走路とその周辺の灯火

続いて航空保安システムの実習室へ。

まずは富山空港でも話題のこれ!

ILS実習装置(LLZ)

ローカライザー機器です。
このような装置が、富山空港のローカライザー脇にある赤白に塗られた局舎の中に設置されています。

ローカライザー空中線模型(1/50)

アンテナ部を大きく

システムは二重化されている
異常があれば自動的に切り替わるそう

このローカライザー、富山空港での検査飛行動画はこちら






続いて、みんな大好き(?)VOR装置を拝見。



VOR/DMEアンテナの模型
中央の赤い棒がDMEのアンテナ
周囲に並べられた白いレドームがVORのアンテナ

白いレドームの中にはこのようなアンテナが収納されている

その他の装置も駆け足ですがご紹介。

TACAN装置

SSR実習装置

ASR実習装置

電子科の学生や教官からもいろいろお話を伺います。

2次レーダーのみの運用における飛行位置特定のしくみを熱心に解説していただきました。なるほど納得。
「C言語も学習しますよ」なんて話も。うう、プログラミングとか無理ぃ…。


実際現場で管制卓の整備を行っていた技術官の教官には音声システムについて詳しく解説していただきました。

以前から疑問だった「VHF波とUHF波はひとりの管制官が同時にひとつのイヤホンで聞いているの?」の質問。
「ええ、同時に聞いています。中にはもっと多くの複数波をひとつのイヤホンで聞き分ける聖徳太子みたいな管制官もいますよ」とな。

まだまだ修行が足りないワタクシ…←


最後に運航情報官関連の展示として、国際対空通信の管制卓を見学。
情報官関連の展示は少な目。



こんな感じで2時間以上かけてタップリと施設内を見学。


見学者の中には、将来の航空保安職員を目指す若い学生・生徒さんたちの姿も。

管制官や情報官・技術官の試験を受験するにあたって、航空保安の知識は全く必要ありません。ただ、このような実習の現場を見ておくことによって、目標意識が出て目指す気持ちが強くなると思います。
私も若いころに1度だけ受験経験がありますが、このように実際の現場を見ていたならば、あと何度かは挑戦したかもしれません。


若い人にしかチャンスのない航空管制官への道。
ブログを読んでくれた人の中で管制官や情報官・技術官を目指す人には、ぜひこのチャンスをものにしてほしいと思います。

校舎内に掲出されていた「航空管制官組織理念」

以上、航空保安大学校の空の日・オープンキャンパスの様子でした。
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