先日ブログで、能登空港の
「能登ILS(LOC・DME・GP)」の設備更新に伴う代替施設
「能登可搬型LOC25(ローカライザー)・能登可搬型LOC-DME25」の飛行検査の様子をご紹介しました。
8月20日より代替ローカライザーが正式に稼働し、既存のILSは停波。設備更新工事と試験電波の発射が行われていました。
そして10月中旬、工事を終えた能登ILSを検査するため能登空港に再びチェックスターが飛来しました。
今回はILSを構成する施設(ローカライザー・T-DME・グライドスロープ)のうち、「グライドスロープ(グライドパス)」の検査飛行の様子を撮影することが出来ましたのでご紹介します。
まずはその様子を動画でご覧ください。
- Flight Data -
Date: Oct 17, 2015
Airline: 国土交通省 航空局 飛行検査センター JCAB Japan Civil Aviation Bureau
Aircraft: Bombardier BD-700 Global Express
Registration No.: JA005G
Flight No.: VFR
Runway: 25
METAR:
RJNW 170200Z 07006KT 030V110 9999 FEW025 20/14 Q1020
RJNW 170300Z 03005KT 340V070 9999 SCT030 20/14 Q1020
RJNW 170400Z 05005KT 360V110 9999 FEW030 20/14 Q1019
これまでローカライザーの検査飛行については、前回の能登のほか富山空港でも何度か撮影していますが、この
グライドスロープの検査飛行を撮影出来たのは今回が初めて。
グライドスロープとは、航空機に対して適切な進入角度(GP 3度)を示すための電波誘導装置(対してローカライザーは左右の進入方向を示す)。このグライドスロープとローカライザー・T-DMEを利用して航空機がILS進入を行います。
前回の代替ローカライザー検査ではチェックスター3が検査を実施しましたが、今回は
「チェックスター5」(Bombardier Global Express BD-700-10 JA005G)が飛来し、その美しい機体と素晴らしい検査飛行を披露してくれました。
なお検査は
能登ILSの設備(ローカライザー・T-DME・グライドスロープ)を計4日ほどかけて行われた模様です。
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動画内で検査が行われているのは、この「グライドスロープ」(写真中央・鉄塔)
鉄塔には3つの「コーナーリフレクタアンテナ」が取り付けられている |
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まずは飛行検査機「チェックスター5」がレベルラン飛行で上空を通過 |
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続いてローアプローチによる検査飛行
着陸態勢で滑走路に向けて進入し… |
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グライドスロープ横を過ぎると上昇 |
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このグローバルエクスプレスの特徴は主翼前縁にあるこの「スラット」
これにより低速性能に優れ、ジェット機ながら低速での飛行検査にも対応が可能 |
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アンテナ横ではセオドライト(測量機器)を使って飛行機を一定の角度や方向へ誘導する地上検査官の姿(写真赤丸) |
セオドライトを使った飛行検査では、一定の角度で誘導された機体と航空機が受信した電波の誤差を機上の
飛行検査システム(AFIS:Automatic Flight Inspection System)を使って測定、また調整が必要な場合は地上の技官が設備局舎内で機器調整を行いながら、これらの飛行検査を繰り返し行います。
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地上のセオドライトに誘導されながら、様々な角度から進入するチェックスター |
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つづいて滑走路左側から進入 |
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今度は右側から進入
様々なコースを飛行してデータを取っていく |
今回訪問した日にはグライドスロープ検査に伴うローアプローチが複数回実施され、グローバルエクスプレスによる美しい飛行を見ることが出来ました。
動画内ではグライドスロープに対してのレベルランとローアプローチの様子のみ収録していますが、ILSの飛行検査ではこれ以外にも
「アークフライト」や
「モニターアライメント」なども実施されています。
- ローアプローチ
ローカライザーコースやグライドスロープコースに向かって進入し、滑走路上を低空で飛行
- アークフライト
ローカライザーコースやグライドスロープコースに直交して、一定高度を維持しつつ円弧状に飛行。数マイルから数十マイル先で行われる
- レベルラン
高度を一定に保ったままコース上を飛行
- モニターアライメント
滑走路末端に機体を停止させ、ローカライザーコースを左右に振り、地上側モニターの機能を検査
これらの飛行を繰り返しながら検査が行われます。
今回実施されたのは
「開局検査」と思われますが、その検査項目を
飛行検査業務処理規程より抜粋してみました(資料は古い可能性もあるので
参考としてください…)
開局検査
航空保安施設等または飛行方式等の運用開始に先立ち、当該航空保安施設等または飛行方式等が所要の要件を満たすことを確認するために行う検査を言う
グライドスロープの検査項目は以下のように記載されています。
変調度
変調均等性
フェージング
グライドパス巾
クリアランス
(1)グライドパスの下側
(2)グライドパスの上側
(3)障害物間隔
グライドパス角
ILSリファレンスデータム
ストラクチャー
カバレージ
監視装置
(1)グライドパス巾
(2)グライドパス角
(3)出力の減衰
予備装置
この日の飛行検査は12時前から始まって16時ごろまで行われ、その間一度も着陸することなく上空を飛行し、レベルラン・ローアプローチ・アークフライトが続けられました。
中部空港への飛行時間を含めると7時間以上となり、機上のパイロットや検査官、また地上の検査官たちにとっても長い1日だったと思います。
これが複数日、また他の空港や航法施設でも同様の開局検査や定期検査飛行が年間通して行われています。
検査を終えたこれら能登ILSは11月12日より再び稼働予定。冬場の視界不良の中での着陸を地上から支えてくれることでしょう。
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左が代替稼働中のローラカイザー、右が今回更新が行われたローカライザー |
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グライドスロープ局舎周辺には作業車の姿 |
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さて、今回クールな飛行を見せてくれたチェックスター5ですが、新しい飛行検査機導入に伴い、このグローバルエクスプレスを含めた4機が退役する計画となっています。
退役する予定のチェックスターは
- Gulfstream IV-SP JA001G (チェックスター1)
- Gulfstream IV-SP JA002G (チェックスター2)
- Bombardier Global Express BD-700-10 JA005G (チェックスター5)
- Bombardier Global Express BD-700-10 JA006G (チェックスター6)
の2機種・4機。
新たに仲間入りした「Cessna Citation Model 525C CJ4」3機へと置き換えられ、これにより航空局の飛行検査機からガルフストリームとグローバルエクスプレスの全機が姿を消すことになります。
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このグローバルエクスプレスによる検査飛行を見られるのもあと僅か |
新機種も気になりますが、富山空港の検査飛行でも度々その美しい飛行を見せてくれたこのグローバルエクスプレスによる検査飛行が見られなくなるのも寂しいですね。
そんな当チャンネルではこのほかにもこの国土交通省航空局・飛行検査センター所属の飛行検査機「チェックスター」の動画を公開しています。
再生リスト:[JCAB CheckStar] 航空局 飛行検査機 "チェックスター[whitewing681]
以上、能登空港ILS/グライドスロープ飛行検査レポートでした。